[ブックレビュー] 坂井三郎著「大空のサムライ」

社会・政治 | 2010年08月15日 | 8,493 views | 0 comments | 0 trackbacks |
大空のサムライ

 この本は、太平洋戦争の最中、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)を操縦し、出撃数約200回、撃墜数64機を記録した日本海軍のエースパイロット坂井三郎(さかい さぶろう)の物語(自叙伝であり回想録)です。

 「SAMURAI!」のタイトルで英訳版が出版されると、たちまち世界中で100万部ものセールスを記録。日本人の著書としては、欧米で最も多く読まれている作品のひとつですが、日本人の中で知っている人は意外にも少ないのではないでしょうか。私自身も最近までその一人でした。

この本との運命的な出会い

 記録によると私の祖父は太平洋戦争の末期、1945年3月にフィリピン島のボンドックで戦死したことになっています。当時、まだ祖母と結婚したばかりで、自分の子供の顔を1度も見ることなく異国の地で非業の死をとげることになるとは、さぞ無念だったろうと思います。

 最近になって、祖父がどのような状況で戦争に巻き込まれていったのか少しでも知りたいと思い、第2次世界大戦に関する著書や記録を探していたところ、この本の存在を知りました。

 そんな折、以前こちらで紹介した「ザ・ニッポンレビュー」の中でも、この本が取り上げられており、世界中の読者から絶賛されているという事実を知りました。

 まったく違う方面から、ほぼ同時期にこの本に辿り着いた事に対して、何か意義深いものを感じています。

自らの信念を貫き世界のエースパイロットへ

 この本は、坂井青年がパイロット訓練生として霞ヶ浦航空隊に入隊するところか始まります。そして第2次世界大戦が勃発。まさに死が隣り合わせという過酷な状況の中、幾多の困難や様々な苦悩を乗り越えて、やがてエースパイロットになっていく過程が克明に綴られています。

 そこには、戦争や死を美化することなく、ただ若いパイロット達が与えられた使命に向かって全力で生き抜く姿が描かれています。その純粋でひたむき姿が当時の敵味方の枠を超えて、世界中で共感を呼んでいるのだろうと思います。

 悲惨な戦争を描いた物語であっても、全編に渡って流れる爽やかな風のようなもの感じました。どんなに過酷な状況下でも「粋」や「ロマン」を忘れない飛行機乗り特有の気質が見え隠れするからかもしれません。「戦争モノはどうも苦手で」という方にもオススメできる一冊です。

海外からも大絶賛の声

 この本に対する海外の読者からの反応を紹介したいと思います。以下、amazon.comのこちらのページから一部抜粋、意訳。

ありありと語られた太平洋戦争について歴史描写は、あなたを虜にしてしまうだろう。この本を読んでいる間、坂井とともにコックピットに座っているような感覚にさせられる。絶対にオススメの一冊だ。

この本は、すべての歴史ファン、もしくは第2次世界大戦の「反対側」でおこっていた事に興味を持つ人たちにとって必読の一冊だ。これは非常に優れた本であり、第2次世界大戦について書かれた本の中でも最も素晴らしい作品の一つと言える。

この本は私を釘付けにした。本当に素晴らしい一冊なんだ。友人たちといっしょに擦り切れるまで回し読みをしたんだ。ああ、この本の魅力を上手く伝えることができないよ!

坂井三郎は本当に素晴らしい人間だ。そして、第2次世界大戦を真剣に学ぶ者にとって、彼のストーリーは絶対に知る必要があるものだ。なぜなら、かつて我々と戦った人たちが何を考え、何を感じていたのかを教えてくれるものだからだ。彼の語る「希望」「夢」「志」「パイロット仲間への想い」そして「敵に対する尊敬の念」を読めば、これまで繰り返し描かれてきた冷酷で血に植えた動物という日本人に対する時代遅れでステレオタイプな考えは消し飛ぶだろう。

太平洋戦争を知るためには、絶対に欠かせない一冊だ。どうか私を信じて欲しい。第2次世界大戦の研究に生涯を捧げてきた私にとっても決して忘れることのできない素晴らしい作品なんだ。

 えいちさんの「誤訳御免!!」には、さらに多くの訳文が掲載されていますので、もっと読んでみたい方は、こちらのページを参照してみてください。 

最後に(サムライの精神について)

 この著書の本編には、坂井三郎自身が「なぜ世界のエースパイロットになり得たのか」その理由に関する記述がほとんどありません(おそらく本人が控えめな性格で、単なる自慢話になるのを避けたかったからでしょう)。ただ、あとがきの中でその超人的とも言える努力の一端を垣間見ることができます。(ちなみに続編では、さらに詳しく書かれているので、興味のある人は続きを読んでみることをお勧めします)

 例えば、レーダーが現代ほど発達していない当時、戦闘機乗りにとって最も重要な要素は「視力」でした。そこで、坂井三郎は視力を上げるための訓練として、ただ遠くを見つめるだけの訓練を毎日何時間も続け、ついには昼間でも星を見ることができるまでになったそうです。

 戦闘機による戦いでは、たった1回の負けは「死」を意味するため、二度と挽回の機会は訪れません。「たまたま、その日は体調が悪かった」といっても言い訳にならない厳しい世界です。そのため、いつ発生するか分からない戦いに備えて、常に「心・技・体」のすべてをベストの状態に持っていく。その姿勢は、戦国時代では宮本武蔵(坂井自身も「五輪書」を愛読していたようです)、現代でいえばマリナーズのイチロー選手に通じるものがあるように感じました。

 「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」とは「葉隠」に登場する有名な一節ですが、決して死を美化するような言葉ではありません。「たとえ明日に死ぬようなことがあっても、決して後悔することのないように今日を全力で生きる」そういう意味だと私は理解しています。

 それこそがサムライの精神であり、著者がこの自伝を通じて、後世の人たちにどうしても伝えたかったメッセージではないでしょうか。

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